加地ちゃん先生の blog

加地ちゃん先生の、日々の活動について語りつくしていきます。

「レンズは語る」

「うちは外国の方がよく来られるので、お名前をお伺いしているんですよ」

顔立ちの整った綺麗なお姉さんはそういうと、手慣れた手つきでメニューを作り上げた。おととい発売になったばかりという新メニューを頼んでいた。普段は昭和レトロな雰囲気や、古民家的カフェが好きな僕が珍しくスターバックスコーヒーに来たのは、これが写真教室の個人レッスンだったからだった。

お芋が原料というそのメニューは、これまで飲んだことのあるどんな飲み物よりも「美味しいな」と感じた。甘い。とてつもなく甘い。普段の感覚の三十倍は甘い気がする。とはいえ、今日はたくさん動いて脳も使ったからよしとしよう。そして僕は、透明なストローをドーム型のキャップの肩にすこしだけ預けた。

写真撮っている。人はなぜ、写真を撮りたくなるのだろうか。三万年前の洞窟の奥深くに描かれた壁画たち。三万年後の未来の人に発見されていない作品がきっと、世界には無数にあるだろう。僕らの残した写真は、ちゃんと未来に届けられるだろうか。

来月の誕生日の翌日に、富士フイルムからX-Pro3というデジタルカメラが正式に発表になるという。前情報を整理してみると、これまでのデジタルカメラの概念から結構逆向している部分がありとても興味深い。本来のカメラ、写真とどう向き合うか、というポイントにメスがいれられた感じがする。大きなポイントは「撮った後で液晶画面ですぐに確認ができない」ということ。すぐに、というのがポイントだ。確認できないわけではない。確認するのにワンテンポ必要になるため、きっとあの構造なら確認したくなくなるはずだ。本来液晶画面がある部分は真っ黒いパネルでカバーされている。底面の左右に回転中心を与えられたそのパネルは手前に120度くらい開くようだ。そこを開くことでやっと、撮った絵を見られるらしい。

富士フイルムのカメラは、いまは電子ビューファインダーの中でも確認ができるから、本来背面液晶で確認する必要は、個人使用である限りは、基本的には無い。ただし、120度開いた状態でレンズ面を下向きにテーブルに置けば、まるでBlu-rayプレーヤーのような画面配置で撮った写真を見ていくことはできる感じ。

これには驚いた。撮った写真を「見せない」のは、撮影に集中しなさいというメーカーからの啓示と思える。撮影の度にカメラを顔から離して背面液晶で確認していくのは、たぶん仕事で撮っている時以外には必要のない動作な気がしている。それよりも、目の前で刻々と変化していく情景の方に自分の瞳をフォーカスしていきたい。そんなことを、改めてカメラから教えられるような、そんなカメラが発売となる。賛否両論かもしれないのだけれど、こんなものを量産商品として発売しようとしている富士フイルムが好きだ。仕事ではニコンを使う僕だけれど、お休みの日に散歩に持ち出すカメラは富士フイルムであることがほとんどだ。

人はなぜ、写真を撮り続けるのだろうか。

世界にはきっと、もっとたくさんの答えがあるに違いない。

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