「駆け抜ける光の調べに」
アコースティックギターの軽快なリズムにのせて、パーカッションとその二つを包み込むようなベースのサウンドがライブハウスを感動の渦に巻き込んでいく。
久しぶりにスイッチが入る。カメラは目の延長線上にあり、僕の瞬きと同調するようにその瞬間々を、確実に切り取っていく。
心地よい感覚!
それにつきる。
小さなX100Fは羊の皮を被った狼だと僕は思っている。限られた焦点距離でしか使えないのだけれど、その限られた構図だからこそ「斬れ味」は格別なのだ。
ハイブリッドビューファインダーを右の眼で見、左眼はカメラの外側において両目で被写体を捉える。ライブ撮影ではファインダーの外の出来事も常に同時に捉える必要がある。次の瞬間にも、かっこいい瞬間は次々と目まぐるしく立ち起こっていく。気がついた時には良いシーンはもう終わっている事が多い。演奏者さんが複数いらっしゃる時は、その気遣いは何倍にも膨らんでいく。
さらに、右眼の下側にある背面液晶画面に映る背後の人の位置や行動も同時に把握していく。X100Fのアイセンサーが僕の瞳を認識すると背面液晶はブラックアウトする。その瞬間に後ろ側を確認できるバックミラーになる。カメラマンはけして、お客様の邪魔をしてはならないのだ。
三次元で空間を意識することは良い写真を残す第一歩だと思っている。全方位に意識を向けながらベストショットをモノにしていく。「今夜は手応えがあった!」という感覚に包まれるとカメラマンは幸せだ。
明日も、良い仕事をしていこう。